キャッチ三浦のアメリカン・ボクシング・シーン
キャッチ三浦(三浦勝夫)
(ワールド・ボクシング米国通信員)
写真はM.A.バレラと筆者
10オンス使用はソフト化の前兆か?
三浦 勝夫
先日、ある原稿を書くためゴソゴソ物置を捜していたら古いスポーツ・イラストレーテッド誌が出てきた。何でスポーツ一般誌の同誌を買ったのかとページをめくっていたら、ルエラス兄弟の紹介記事が目に止まった。日付を見ると、もう11年余の歳月が経過している。ちょうどこの記事が出た頃、私も同時チャンピオンに君臨した彼らを取材していたので、とても懐かしく感じられた。2人ともボクサーとしての晩年は恵まれていなかった。兄ガブリエルは彼らのプロモーターだったダン・グーセンの興行を手伝っている姿を見た記憶があるが、弟ラファエルは今、何をしているのだろうか。
ショーセイのリング人生道場
新田渉世
87年、横浜国大2年の時にプロデビュー。96年10月にOPBFバンタム級王座を獲得し、「国立大卒初の王者」としても話題となった。
34戦23勝(17KO)9敗(3KO)2分
13.同門対決②
strong>新田 渉世
11月2日、東日本新人王バンタム級決勝――。ついに片桐秋彦と古橋大輔の「同門対決」の日をむかえることになった。
「同門対決」は滅多におこなわれないことだが、試合が決まると互いに練習時間をずらすなど、避け合って口も聞かなくなるのが普通だという。
同じ中学校野球部の先輩・後輩で、同じ新田ジム所属。日ごろは、「先輩」、「何だよ古橋」と仲良く話している二人にとっては、尚更つらい思いだったに違いない。ジム開設当初から、高校の制服を着て練習に通って来た二人を見てきた私にとっても、複雑な心境だった。
しかし、二人は試合直前まで、「先輩」、「何だよ古橋」とずっと変わらずに過ごしてきた。
地元の商店会へのあいさつ回りや、二人の出身中学訪問、ローカルテレビへの出演など、嫌な顔ひとつせずに一緒に回った。
「あまり仲良くしてしていると、“出来レース”と見る人もいますよ」と、周りから忠告も受けたが、私は二人の自然体を尊重した。
試合前の軽量も一緒に出かけ、計量後の食事も一緒に取った。
「明日はどうする?」
「明日は別々にホールに入ります」
「じゃ、試合前はこれが最後だな。互いに健闘を誓い合おう」
私はそう言って二人の肩に手をのせた。
試合当日、私はどちらのセコンドにもつかず、ニュートラルコーナーの下で二人を見守った。いや、気持は両方のセコンドについているつもりだった。
6戦全勝同士――たとえ先輩、後輩の間柄でも、同門であっても互いに負けるわけにはいかない。勝てば“東日本新人王”なのだ。
東日本新人王決勝は、お互いのジムの応援団が大挙して押し寄せ、毎年、大変な盛り上がりを見せる。今年も後楽園ホールは超満員となった。
そして遂に「同門対決」の試合開始ゴングが鳴った。
しかし・・・、二人の試合が始まると、ホールには“微妙な空気”が流れた。
新田ジムの応援団は、どちらか片方を応援するわけにもいかず、両方を応援しなくてはならない。当然、他の試合に比べて盛り上がりを欠いてしまった。
もちろん、本人同士はやりにくいはずである。「先輩」、「何だよ古橋」と昨日まで一緒に食事をしていた二人が、8オンスグローブで殴り合うのである。
しかし、ラウンドが進むにつれて、次第に試合は白熱してきた。片桐は鼻血を出し、古橋は目の上を腫らした。
後楽園ホールの“微妙な空気”も、“出来レース”と見る目も吹き飛ばし、二人は精一杯パンチを繰り出した。
私は不覚にも目から涙があふれ出てしまった。
試合終了ゴングまで、二人は手を出し続けた。結果は古橋の判定勝ちだった。先輩の片桐はさわやかに笑顔で握手を求め、後輩の古橋は号泣してそれに答えた。
立派だった――。
古橋の試合後のインタビューを見届けると、私は片桐の控え室へ走った。清々しい笑顔で私を見る片桐の頭を撫ぜ、「お疲れさん」とひと言だけ声をかけた。それ以上のことは何も言えなかった。
私の拙文では描ききれないこの“ドラマ”に、ひとまずの終止符を打ちたい。
片桐、古橋、本当に「お疲れさん」――
◆◆◆新田渉世が本を出版しました。「リングが教室。」(ポプラ社)◆◆◆
=概要=
日本初の国立大卒チャンプが開いた小さなボクシングジム。
そこに集う、プロ選手、練習生、トレーナー、そして自分自身。
皆なんらかの傷を負い、なんらかの挫折感を噛み締めている。
でも、ボクシングは人を変える。負けることで、人は変わる。
そう、「負け」に負けるな――
スポーツによる魂の再生を描く、感動のヒューマン・ドキュメント。
▼新田ボクシングジム
神奈川県川崎市多摩区登戸2832 小田急線向ケ丘遊園駅徒歩5分
TEL 044-932-4639
http://www.nittagym.com/
マリオのサンデーパンチ
粂川麻里生
慶應義塾大学文学部助教授。
元「ワールドボクシング」誌編集記者。古えの連載「イラスト・コラム」の復活を狙っている。
内藤、がんばれ、今がチャンスだ!
どういうわけだか、スポーツ新聞各紙は、あれほど騒いでいた大相撲スキャンダルも、サッカー日本代表も、プロ野球クライマックスシリーズもそっちのけで、「亀田家」の処分やら謝罪やらについて騒ぎ立てている。以前から、スポーツ紙に限らずわが国のあらゆる報道は徹底的にワイドショー化してきているが、「亀田家」報道に関しては、それが如実に出ている。
しかし、それならそれで、ボクシング界はいまこそやるべきことがある。亀田家と協栄ジムに対しては、コミッションもそれなりに納得のいく処分をくだした。もう、「亀田」はどうでもいい。それよりも、いまこそボクシングが世間の注目をそれなりに取り戻す千載一遇のチャンスだ。「亀田記事」は本当のボクシング記事ではないが、無関係ではない。何より、世界王者内藤が連日テレビに出て、「善玉」の役割を演じさせられている。これを「利用」しない手はない。
トレーナーの眼
石井 敏治
新日本木村ジム・トレーナー
中屋 一生
NY在住ライター&アーティスト
日本最古参トレーナー 新春の所感 石井敏治
日本漢字能力検定協会が毎年、その年の世相を表す漢字を年の暮れに発表するが、平成19年は「偽」であった。政治、建築業界、食品業界その他各方面で世間の不信を招く多くの「ごまかし」が発生し、政権においては不信の連鎖が収まらないという大変残念なことだ。一口に言って「偽」とは、まことに言い得て妙である。新しい年を迎えて、このような「偽」の社会風潮を是非払拭したいものだ。この願いは恐らく日本中の人々の願いであろう。
ボクシング界においても、不徳の事態を招かぬよう努めて留意して、業界挙げて健全なスポーツとしてボクシングが多くのファンに支持されるよう努力することが必須の方策であろう。
新年を迎えるに当たり、ボクサーは昨年のおのれの戦績について、ある者はその達成感に満足し、またある者は不本意な結果に悔しさを味わっているであろう。トレーナーも同様に指導したボクサーの年間の戦績について吟味して、次に繋がる策を練っているものと思う。
私も、指導している選手に対して、課題である是正点の修正と、新規の技術の教示について種々思いを巡らしている。その中で特に重点を置くのが「誰が見ても、はっきりと勝者と認定出来る闘いをする」。但し、これはKOを狙うということを意味するものではない。さりとてポイントを稼ぐことに専念して、いわゆるタッチボクシングに終始することでもない。
私の採点についての所感は、自分がセコンドを勤めた選手の採点と判定結果の異なる場合があるが、これは当事者としての非客観的視点と、ジャッジの客観的視点、3人のジャッジの位置する場所の違い、加えてジャッジに与える闘い方の好感度の違い等によって、異なる採点結果が出る場合もあり得ることは私も理解できる。ボクサーのファイティングポーズからして、何人が見ても、明らかに勝者と認められるボクシングをマスターさせなければならない。 言うは簡単、行うは難しではあるが、これを実現させてこそトレーナー冥利に尽きると言うべきであろう。先ず必要なのは、全てのブロー、当然強弱をつけるが、それなりに全てのパワーアップを図る。それを満たす条件として、いかなる位置変更を行ってもバランスを崩さない。パンチを繰り出すにあたっては体重移動を十分利用する。連打に対する考察。パワーアップさせたブローを効果的に駆使させるために最も必要なのは、リードブローを効果的に使う方法の習得であろう。
前述した技術を選手に習得させるトレーニング方法としては、初めは各動作を区切って個別に反復練習をする。これらを種々なる取り合わせにアレンジして、総合的なファイティングポーズに形成して行くことを心掛けたいと思っている。平成20年を迎えて、私は79歳になるが、新たなる挑戦に臨む覚悟でいる。
尾崎恵一の後楽園日記
プロ・ボクサーとして2度日本バンタム級王座を獲得した異色のライター。38戦の中には薬師寺保栄、カオコー・ギャラクシー、ルイシト・エスピノサらの世界王者はじめ多くの強豪と対戦経験があり、これらが物書きとしてのバックボーンとなっている。フリーランスの立場から鋭い批評を続け、ボクシング・ワールド誌の連載コラム「尾崎恵一のKOトーク」も好評。東京都出身、42歳。
展望・A級決勝と東日本新人王決勝戦
<A級トーナメント>(10月31日決勝)
権威が下がってしまったA級トーナメントだが、ミニマム級決勝の堀川謙一(SFマキ)対田中教仁(ドリーム)は勝者がタイトル挑戦も近づくランカー対決。
日本1位の堀川(14勝4KO5敗1分)は瀬川正義(横浜光)との左の技巧派対決を制して決勝進出。
05年5月には後楽園で当時無敗の池原繁尊(横浜光)と引き分けるなど、敵地でも安定した力を出せる選手。
田中はデビュー9連勝(4KO)で勢いがある。全日本決勝がなかったので目立たなかったが、昨年度ミニマム級東日本新人王でもある。小柄だが元気一杯のファイターでデビューから3連続KO。その後はやや攻めあぐむ場面も見せながら6戦目で新人王獲得。今年4月、新人王決勝で右アッパーに苦しんだ(2-0勝利)原島暁(館林)と再戦。鋭い踏み込みの右で倒して返り討ちして月間新鋭賞も獲得した。準決勝では元日本1位の熊田和真(オサム)との激しい打ち合いを制して決勝進出。下を向いて打たれる癖もなくなり成長を感じる。6回戦なら田中が押し切りそうだが、決勝は8回戦なので堀川のキャリアも生きてきそう。
バンタム級は白石豊士(協栄)対山中慎介(帝拳)のフレッシュ対決。白石(10勝4KO1敗1分)はしぶとい前進でプロ・アマ経験豊富な今西秀樹(ワタナベ)に競り勝ち決勝進出。アマ時代に粟生に勝ったことがある山中(4勝2KO1分)はサウスポーで左に切れがある。セコンドの「ツー・ワン」の声に呼応しての左から返す右も効果的だ。
フェザー級決勝の李冽理(横浜光)対円谷篤史(アベ)はボクサー対ファイターの対戦。アマ出身で7勝4KO1分のホープの李は徳山に似た広めのスタンスで距離をとるタイプ。03年度東日本新人王新人王の円谷(12勝6KO5敗1分)は気迫を前面に押し出したファイター。技術では李が上だが強引に入られると嫌がる傾向もある。
ライト級の熊野和義(宮田)対日高慎一(尼崎)も対照的なタイプ。02年度全日本新人王の熊野は21勝4KO4敗とキャリア豊富。東日本の決勝では徹底した密着戦法で石井一太郎(横浜光)の強打を殺して判定勝ちした。そのしつこさは健在でトーナメント準決勝ではアマ出身でパワーがある石垣栄(平仲)の距離をつぶして決勝進出。対する日高(13勝8KO2敗)は昨年のB級トーナメント優勝者。途中苦戦もあったが決勝では強打者相手にワンツー中心の堅実なボクシングを見せた。今回の準決勝ではこれもパワーのある鎧塚真也(協栄)と対戦。2回、右ボディーから返した左フックでダウンを奪い、右ストレートでストップ。鮮やかなTKO勝ちで成長を見せた。決勝は両者の距離が勝敗の鍵を握る。
<東日本新人王決勝>(11月4日決勝)
軽量級ではワタナベジムの2人が好選手。L・フライ級の田口良一(5戦全勝2KO)は昨年フライ級で優勝した先輩の金城に似ていて筋が良い。基本に忠実でワンツー、左ボディーが得意で、上下の打ち分けも上手く右アッパーも良い。
S・フライ級の船井龍一(6勝3KO2敗)も左ボディーが強く手数も出て気持ちも強い。準々決勝でそこまで4戦4KOだった山野邉健一(川島)にダウンを奪われながら逆転の3回TKO勝ち。準決勝は連打で圧倒して左ボディーでストップした。対する古川高広(協栄・・・6勝1分)も長身で右ストレートが良い選手。
フライ級の林徹磨(セレス・・・5戦5勝)はきびきびした動きの19歳でジム初の新人王を狙う。
バンタム級はアマ出身で大会前にも骨のある相手と戦っていた田中稔大(角海老宝石)が優勝候補だったが、打たせる傾向があり準決勝で太田裕二(ヨネクラ・・・3勝2KO1敗1分)に判定負けした。
S・バンタム級は元アマの名選手古口哲・古口ジム会長の甥の古口学が6勝3KOで決勝進出。
アマ経験はないがボクシングは器用で左を下げた構えから右アッパーや左フックを巧く当てる。
決勝は6勝1KO2分の大竹秀典(金子)との無敗対決。
フェザー級の古川暁(ドリーム・・・7勝4KO1敗1分)はガードがしっかりしてボディー打ちが巧い。
何より相手の隙を付くアイデアのある選手とトーナメント初戦から感じていた。3者40-36の判定で初戦突破すると次戦は左フック一発で初回TKO。準々決勝では長い左ジャブに成長を見せて2回にまたも左フックでKO勝ち。ここまでは全階級通じて私の一押しの選手だった。が、準決勝は渥美博文(横浜光)のパンチにダメージを受けて大苦戦。相手の疲れに乗じてコンビネーションを返して2-0で辛勝も打たれ弱さを露呈してしまった。
S・フェザー級の川本日明(金子・・・5勝3KO1敗1分)は先代会長の金子繁治氏(元東洋フェザー級王者)と同郷で、アマ出身らしからぬファイター。特に左フックは強い。昨年も出場していて3戦3KOの時点では優勝候補と見ていたが、次戦でKO負けした。今年は怖さが消えないのかパンチに思い切りがなくなり判定と引き分け勝者扱いで勝ち抜いてきた。準決勝では完全復調とは行かなかったが、少しパンチに思い切りが出てきて左フックの迫力は戻った。決勝で豪腕復活なるか。対する丸山伸雄(八王子中屋・・・7勝1KO1敗)は亡くなった先輩の村上潤二選手に似たスタイリッシュなサウスポー。打たれ強くないところも似ているのだが技術でカバーしてきた。
ライト級の近藤明広(日東・・・5勝3KO1敗)はアマ43戦の経験を持つまとまった選手で、準決勝では右カウンターで見事な3回KO勝ち。決勝で戦う高田茂(5勝2KO3敗)は2年目の出場で左カウンターが巧いサウスポー。昨年は消極策が裏目に出たが個人的には気の毒な判定に感じた敗戦だった。
S・ライト級の千葉透(国際)は大会前の時点では全階級通じて注目の選手だった。33戦のアマ経験を持ち、身長とリーチに恵まれたサウスポーでパンチもあった。大会前は全てタイ人相手ながら4戦4KO。相手の実力に疑問はあったが素質は感じた。が、大会初戦で初の日本人相手に食い下がられると判定勝ち。リーチを生かさず左アッパーを迎え撃つパターンが多かった。準々決勝では左強打からのコンビで3回逆転TKOしたものの相手のボディー攻撃にピンチの場面もあった。
準決勝の相手は同じサウスポーだが変則の迫田大治(横田スポーツ)と対戦。この迫田は顎が上がり前半よく打たせるが異常に打たれ強い。けしてフォームは良くないがパンチもあり準々決勝では中村賢人(山神・・・サウスポーの巧い選手だった)に大ピンチからの逆転KO勝ちして5勝5KO1敗とした。
そして準決勝の結果は前半千葉のボディーブローが有効だったが、後半乱戦に持ち込んだ迫田が2-1勝利。横田広明会長の打たせないボクシングというよりは、会長の元同僚の大友巌(元日本、OPBFライト級王者)のボクシングに近いが実戦の強さがある。




