40.自主興行準備②

新田 渉世

 長く間が空いてしまった。せっかく“書く場”を与えられているにも拘わらず、もったいない話である。忙しいとはいえ、この「“リング人生”道場」は、以前の「新米ジム会長奮戦記」を含めると、もうすぐ5年目に入るロングシリーズだ。ここは踏ん張って継続させてゆきたいところ。というわけで、気を引き締めて出直したいと思う。

 最近、私の仕事で大きなウェイトを占めているのは、やはり4月17日におこなわれるジム初の自主興行の件である。ジム代表選手の黒田雅之(2006年度全日本新人王MVP・日本10位)をメインエベントとして、6回戦2試合、4回戦5試合、合計7試合をプロモートする。
 
 これまで「乗り興行」と呼ばれる共催の興行には何度も参加したことがあったが、それらは経費を分担して支払う以外、さほどの負担を背負うことはなかった。
 会場の予約、協会、コミッションとの手続き、チケットやポスター、試合パンフレットの手配、その他諸々の業務は全て、“幹事ジム”と呼ばれる中心ジムがやってくれてきたからである。

 今回は、それらを全て自分のジムでやらなくてはならない。「慣れれば大したことないよ」と、ある会長からは言われたが、慣れるまではてんやわんやである。
 しかし、私の夢のひとつには「世界的なプロモーターになる」というのがある。今回の自主興行デビューは、その為の小さな小さな第一歩かもしれない。それでも気分はワクワクである。大変ではあるが、楽しくて仕方ない。

 まずは会場の手配だが、興行を開催したい時期に後楽園ホールの空きが無かった為、下北沢の「北沢タウンホール」という公共施設でおこなうことになった。ここはかつて古巣の金子ジムが興行を開催したことのある懐かしい場所だった。
 メインエベントの黒田雅之のマッチメークでは、7勝(6KO)1敗というハードパンチャーの為か、なかなか相手が見つからず、タイの選手を呼んで来ることになった。黒田にとっては初めての国際試合となる。と同時に、私にとっても初めての海外選手招聘ということでドキドキの心境だ。

 そして、後楽園ホールと最も大きな違いはリングを持ち込まなくてはならないということだ。いろいろな所に問い合わせた結果、あるプロモーターにお願いして、後楽園ホールと同サイズの本格的な興行用リングをレンタルすることにした。
 選手へのファイトマネー等を合計すると、結果的に後楽園ホールよりも経費が高くついてしまったが、試合パンフレット用の広告スポンサーを募集し、「新田ジム、ガンバレ!」という気持ちで応援して下さる方々のご協力を仰いだ。

 私はこのような裏方の仕事に奔走してはいるが、やはり大切なのは選手の成長である。現在、選手の直接的な指導は、トレーナーが中心となっておこなっている。選手やトレーナーが、存分に力を発揮できる“環境”を提供することに、私の仕事は少しずつシフトチェンジしてきているのかな・・・と思う。


◆◆◆新田渉世が本を出版しました。「リングが教室。」(ポプラ社)2月13日発売◆◆◆
 
                        =概要=
         日本初の国立大卒チャンプが開いた小さなボクシングジム。
         そこに集う、プロ選手、練習生、トレーナー、そして自分自身。
         皆なんらかの傷を負い、なんらかの挫折感を噛み締めている。
         でも、ボクシングは人を変える。負けることで、人は変わる。
                    そう、「負け」に負けるな――
         スポーツによる魂の再生を描く、感動のヒューマン・ドキュメント。

  
  ▼新田ボクシングジム
神奈川県川崎市多摩区登戸2832 小田急線向ケ丘遊園駅徒歩5分
TEL 044-932-4639
http://www.nittagym.com/

バックナンバー