54.後楽園ホール初興行②

新田 渉世

 
 11月1日、ついに新田ジム初の後楽園ホール自主興行を開催した。

 全10試合中9試合が新田ジムの選手。そしてエキシビションが2組――。ボクサーは戦う場所があってこそボクサーである。つまり試合が出来てこそ意味があるわけだ。
 プロ選手がだんだん増えてきたので、当然マッチメークの量も増えてくる。今回の自主興行は、選手達にまとめて試合の場を提供することも目的のひとつだった。

 しかし自主興行といってもやはり先立つものが必要となる。私は当日の試合プログラムに掲載する広告の協賛スポンサー集めに奔走した。
 それと同時に、あの“ボクシングの殿堂”後楽園ホールに少しでもお客さんを多く動員する努力も必要だった。

 選手達への直接指導は2人の担当トレーナーが中心となっておこなった。私はワンポイントアドバイスに特化し、選手とトレーナーの信頼関係構築のフォローを心がけた。
 そして連日連夜、協賛スポンサーへの依頼や試合の宣伝へと、“わが子”達の為に駆けずり回った。
 理解と協賛を賜るのは、決して容易なことではない。勇気を振り絞って話を持ちかけても、残念な結果に終わることもあった。それでも多くの人々のお陰で、何とか興行開催にこぎつけることが出来た。

 選手達もそれぞれ順調な仕上がりで当日を迎えることが出来、あとは試合のゴングを待つだけとなった。
 私は試合のセコンドにつくべきかどうか、直前まで迷っていた。主催者として、興行の進行をコントロールしたり、ご来賓の対応に心配りをしたりしなくてはならないからだ。
 しかし今回、私は敢えて全試合のセコンドにつくことに決めた。やはり試合こそが興行の要(かなめ)であり、少なくとも初の後楽園ホール自主興行という舞台では、そこに最大のエネルギーを注ぐことがベストだと思ったからだ。

 午後5時30分の開場時間に合わせ、ぞくぞくと観客が入場してきた。――まずまずの出足だ。少しずつ会場の席が埋まってゆく。
 やがて試合が始まり、私はセコンドとして試合に集中した。選手達は次々と熱戦を繰り広げ、観客が沸いた。ふと会場を見渡すと、思った以上の人々が客席を埋めていた。この日までに駆けずり回って呼びかけた人達の顔が沢山見えた。
 また、自身のみならず、友人や知人を誘って少しでも興行を盛り上げようと努めてくれたジム一般会員さん達の顔も沢山見えた。

 結果的に戦績は5勝(2KO)4敗――。何とか勝ち越しとなった。もちろん、負けた選手達は悔しい思いをしたが、皆大善戦し、恥ずかしい試合などひとつも無かった。
 観客動員数も1000人弱と、6回戦がメインの興行としてはまずまずの数字だった。
 
 初めて観戦した人々からは、「ボクシングって面白いですね」「もの凄く興奮しました」等々、ありがたいお言葉をいただけた。
 こうして少しずつでもボクシングファンが増えてくるのは嬉しい。やはり地道な事の積み重ねも大事なのだと思う。

 何はともあれ、新田ジムの後楽園ホール初興行は、大成功と言える素晴らしいものとなった。睡眠時間を削ってイレギュラーな仕事をこなしてくれたスタッフらと共に、私は心地よい達成感を味わった。

 今回ご協力いただいた方々に、この場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。


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                        =概要=
         日本初の国立大卒チャンプが開いた小さなボクシングジム。
         そこに集う、プロ選手、練習生、トレーナー、そして自分自身。
         皆なんらかの傷を負い、なんらかの挫折感を噛み締めている。
         でも、ボクシングは人を変える。負けることで、人は変わる。
                    そう、「負け」に負けるな――
         スポーツによる魂の再生を描く、感動のヒューマン・ドキュメント。

  
  ▼新田ボクシングジム
神奈川県川崎市多摩区登戸2832 小田急線向ケ丘遊園駅徒歩5分
TEL 044-932-4639
http://www.nittagym.com/

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